■Live Another
***第1幻界。
我々が住むこの世界。
長らく、この世界に住む人々は、【魔導力】というものに触れて来なかった。
そればかりか、他所の【幻界】が存在することも、知ることはなかった。
極一部の者を除いては。
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七領市という街が在る。
かつてその一部は東京都で、残りの一部は神奈川県だった。
現在は極めて特異なルールを持つ自治区である。
小さな小さな自治区である七領市は、【ソーサラー】を隔離する為に生まれた。
【ソーサラー】というのは、不思議な――見たものはそれを魔法か超能力の類だと思うだろうし、実際にそういうものなのだろう――能力を持った人々のことで、能力自体も、その扱いの上手下手も、大きな個人差がある。そして、能力が高く制御が下手な者は、ときに暴走することがある。七領市は、そういったソーサラーの暴走に端を発する、とてもとても閉鎖的な街である。
とあるソーサラーの特に大きな暴走の後、【七領要柱】という7つの【見えないオブジェクト】を立てて、ソーサラーが潜在的に持つ力【魔導力】の流れを集め、封じている。ここを【七領要柱門】と言い、かつては幻界同士を繋ぐ【幻界門】として使われていた。この【七領要柱門】の維持に、門自体が封じている筈の【魔導力】が必要というのが、七領市にソーサラーを集めているもうひとつの理由である。
こういった背景を持つ街であるので、七領市とその付近に住む者の多くはソーサラーで、残りはその家族か、別の事情があるか、七領市を守る【軍人】である。彼らは、ソーサラーと魔導力の存在も、他所の世界の存在も知っている。
だが、七領市には確実にソーサラーでない者が住んでいる。そして、全てが人それぞれである以上、ソーサラー間でも格差というものが生まれる。
より強力な力を持つもの、高い権力を持つ軍に携わる者は疎まれる。また、魔導力を異質なものとして捉え、自分だけは【普通】であると信じ、他のソーサラーを迫害する者も少なくない。迫害する側もソーサラーであったとしても、である。
七領市から離れて住む者達は、七領市の存在と意味を知らない。